メンタルヘルスに注目が集まる中、テレビや新聞・インターネットなど様々なメディアで、うつ病を始めとするメンタル疾患が取り上げられる機会が増えました。それにより様々な情報が手に入るようになりましたが、その情報の質や内容はまだまだ玉石混交といえます。
まず、それらの中から正しい情報を手に入れ、そこから知識を得る必要があります。そして、その知識を身につける、つまり自分のものにします。その上で、それに「とらわれない」ことが非常に大切です。
なかなか難しいですが、実はこれがメンタルヘルス対策を行っていく上で、重要なキーポイントとなります。なぜなら「表面」的な事象ではなく、その「本質」を見ることが求められるからです。
ここで一つ、クイズを出してみましょう。
皆さんの会社の社員がうつ病になった場合、してはいけないことは以下のうちどれでしょうか?
A:「一緒に病気を乗り越えていこう」と励ます
B:「気分転換に」と旅行や遊びに誘う
C:「一緒に病院へ付き添う」
正解は、「B」です。
ここで、「A」と答えた方は要注意です。「A」の答えを選んだ理由はなんでしょうか?「こんなの簡単。だって、うつ病の人に対して『がんばれ』などと励ましの言葉をかけるのは厳禁でしょ。だから答えは『A』!」といったところでしょうか。
確かに、うつ病の人に「がんばれ」「元気出して」「しっかりして」などと励ますような言葉は禁句とされています。しかしそれは、このような励ましの言葉をかけられたからといってがんばれるようになるものではなく、逆に無理を強いることになり、精神的に大きな負担をかけてしまうからです。さらには、「がんばれない自分」に対して自責感や絶望感を持つなど、患者さんを追い詰めることにもつながります。そのような事態を防ぐために「言ってはいけない」…という意味なのです。
今回のケースでは、あくまでも患者さん一人に「自分で何とかしなさい」といっているのではなく、「一緒に乗り越えていきましょう」という温かいサポートを示す言葉ですから問題はありません。
このように、上司や同僚・経営者・人事担当者など周囲の人たちが、患者さんの病気やその辛さを十分に理解した上で、「治るまで見捨てるようなことは決してしない、病気を治すのに協力するので、一緒にがんばろう」という温かい心のこもった励ましは、むしろ進んで行うべきものといえます。
まさにこれが、「とらわれない」ということなのです。「こうしてはいけない」という情報を得たら、まずそれが正しい情報かを確認する。そして「なぜ、それがいけないのか」ということまで理解する。つまり知識を自分のものにする。そして、その知識にとらわれず柔軟に対応する。
これらが出来ていれば、この問題を間違うことはありません。言葉の「表面」的な部分に振り回されるのではなく、その「本質」をつかむことが肝要ということなのです。