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職場のメンタルヘルス対策において、自宅療養のための欠勤や休職および復職の可否については基本的に会社が主導権を持ち判断すべきものと考えます。
その理由を以下に述べていきましょう。


★会社が負う「安全配慮義務」とは
 会社が負う「安全配慮義務」とは、いったいどんなものなのでしょうか。
 安全配慮義務とは、労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)において、「使用者は、労働契約に伴い労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする。」と規定されています。

 最高裁判所は、電通事件(※章末参照)において「使用者はその雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」と明言しました。これにより会社は社員の身体の健康だけでなく、心の健康についても配慮する義務を負うことが明確に示された形となりました。

 安全配慮義務について考える際のポイントは、「予見可能性」(社員の生命や健康等に損害が生じることを会社が予見できたか)と「結果回避可能性」(会社に損害を回避する手段があったか)が存在するか否かという点です。
 この2つの可能性があった場合、会社はその損害を回避する手段をとる義務があるとみなされるのです。

 もし会社が、社員が何らかのメンタル疾患にかかっている可能性があると知りながら、本人からの申し出や医師の診断書や指示がなかったからといって、その病状が悪化するのを防ぐための措置(増悪防止措置)をとらなければ、会社は安全配慮義務違反を問われることになるのです。

※電通事件:社員が過重労働のためうつ状態に陥り、自殺した事件について、その両親が会社に損害賠償を請求し、ほぼ請求に沿って認容がされた事例
【最高裁第二小 平12.3.24判決】


★労働契約と私傷病による労務提供義務の不履行
 一方、本来社員は会社との労働契約上、仕事に就く能力があることを前提に労務を提供する義務を負っています。そのため、私傷病により仕事に就けず労務を提供することができない場合には、「労務提供義務の不履行(約束が果たせないこと)」により、労働契約の解約の事由となります。

 しかし、労務提供が一時的にできなくなったからといって即解雇というわけにはいきません。そのため多くの会社では、私傷病による一定期間の欠勤が続いた場合労働契約関係は維持したまま労務への従事を免除する「休職」措置をとっているのです。つまり私傷病休職制度とは解雇猶予期間という性質を持っているといえます


★休養が必要か?判断するのは「会社」
 会社が負う「安全配慮義務」と社員が負う「労働提供義務の不履行」という2つの観点から、会社が主導権を持ち休養の必要性について判断していかなければならないことがお分かりいただけたかと思います。では具体的にはどのように判断していけば良いのでしょうか。

 うつ病の初期では、圧倒的に多くの人が一見「軽症」に見えるといいます。しかし、実際に心理テストや詳細な診察を行ってみると、見た目以上に重症である場合が多いのです。更にそのようなケースでも、とくに沈痛な様子もなく時には笑顔を見せながらハッキリと希死念慮(「死にたい」と思う気持ち)を口にすることもよくあります。
 職場のメンタルヘルス対策においては、このように一見して「軽く見える」といった状況に惑わされず、会社から見て「就労に支障があるかどうか」という観点から判断していく必要があるでしょう。
 この場合「会社から見て」というのがポイントです。と言うのも、患者さん本人は自分の病気を「軽症」だと考える傾向にあります。
 さらに病気の初期であればその時点では働いているし、無理をすればまだ働けるからです。また、同様の理由から長期間の休養をとることをためらう場合がほとんどです。

 しかし会社から見ると、明らかにパフォーマンスが落ちていたり勤務態度に問題が出ていたりと、何らかの仕事に支障をきたす現象が見られることが考えられます。ですからそれらの状況を根拠に、必要であれば主治医や産業医と連携をとりながら、一定期間しっかりと休養をとることを促すことが第一歩だといえるでしょう。
 どうしても休まない場合は、不完全な労務の提供拒否や休職命令の発令などの対応を取ることも必要となります。


★「無断欠勤」には、迅速かつ厳格な対応を
 また、1人暮らしの社員が無断欠勤をしているにも関わらず、企業側が放置しているケースも時折見受けられます。これは、絶対にあってはならないことです。このような場合、メンタル疾患の可能性の有無にかかわらず早急に本人に連絡を取り、状況を確認するようにしましょう。
 他の身体疾患等が原因で倒れていたり、最悪の場合は突然死していることも考えられるためです。私自身、これまでそのような悲しいケースをいくつか経験しています。もし、電話やメールで連絡が取れなければ、直接家を訪れることも必要でしょう。

 特に休み明けの出勤日は要注意です。休みの数日間は会社と接触しないわけですから、その間何かが起きていても発見が遅れてしまうからです。なお、家族と同居している場合でも必ず確認を取り、状況を確認するようにしましょう。

それには、普段から社員に対して
・欠勤するときはかならず会社に連絡する義務があること
・もし無断欠勤があったら、速やかに人事・労務担当者へ連絡すること
を周知徹底しておくことが肝心です。

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